初めて星を見た頃


 私が始めて星に興味を持ったのは確か高校1年生の春休みの頃だったと思う。別にこれといったきっかけはないのであるが、友達から天文雑誌を見せてもらい、その表紙に載っていた月面写真を見て、なんとなく興味を持った。

 高校2年のとき、天文雑誌を買い読んでみたが、内容は難しく半分も読めなかった。そのうちお金がたまったので、天体望遠鏡を購入した。この機械は口径4センチの反射式で、望遠鏡としては大変お粗末なものであった。しかし生まれて初めて見た月のクレーターや、プレアデス星団の美しさは今でも思い出すことができる。

 望遠鏡が発明されたのは1608年のことで、それを初めて空に向けたのは、ガリレオ・ガリレイである。ガリレオは、自作の望遠鏡で月のクレーターや、金星の満ち欠けなど、天文学史に残る数々の発見をした偉大な人物であるが、今考えるとガリレオが月を初めて見たときの感動が私にもわかるような気がする。

 やがて私は口径4センチの機械では満足できなくなり、天文アマチュアなら誰でも一度は行うように、反射望遠鏡を自作することにした。そのためにはまず資金が必要なので、資金集めにその頃、父の勤務していた会社でアルバイトをすることにした。しかしいざアルバイトを始めると、これが思ったほど楽ではなく、途中でやめようかとも考えたが、そうもいかず、何とか最後までやりとおした。

現在使用中の望遠鏡
口径21センチ反射望遠鏡
主にベランダで月や惑星を見ています。また、観望会などで使用しています。
像が極めてシャープでよく見えます。
こちらは天体写真の撮影用に使用しています。口径12.5センチの屈折望遠鏡です。カメラはブローニサイズを使用します。
架台はマークXという機種で現在は製造されていません。それに純正のピラーを組み合わせた珍しいタイプです。

 そのかいあってか、口径10センチの反射望遠鏡の部品を手に入れ、2ヶ月かかってやっと記念すべき自作第1号機が完成したのである。それからのいうもの、連夜、星図を片手に星とにらめっこの生活が始まった。

 現在は天文関係の仕事につくことができ、自分としては望みどおりになったのであるが、会社にいても星、星、星・・・家に帰っても星、星、星・・・と一日中星だらけの生活である。

 私は電車で通勤している。夕方、駅から家に帰るまでの10分間歩かなくてはならない。そのとき私は星を見るために、いつも上を向いて歩くので、そうすると方向感覚を失うらしく、あるときはドブに落ちてみたり、電柱に頭をぶつけたりするのである。しかし、こればかりは道楽のためやめるわけにもいかず、自分でもいささかあきれている今日この頃である。















「ミニマガジン水戸」に20代前半(1974年頃)に連載していた星に関するエッセイ「星雑記−その1−」です。原文のまま