2012年5月21日(日本標準時)金環日食が見られる地域の概要

       ※世界時では2012年5月20日の金環日食です。
    ※これらの説明図の無断転載を禁じます。


 

 2012年5月21日(日本標準時)に金環日食が見られる地域は、中国、日本(九州南部、四国、近畿、東海、関東、東北南部)、アメリカ合衆国などです。これに伴う部分日食をフィリピン、中国、モンゴル、ロシア、日本全国、太平洋上、カナダなどの地域で見ることができます。
 
 なお、このひとつ前の金環日食は2010年1月15日(金)に中央アフリカやモルディブ、インド南部、スリランカ、ミャンマー、中国などで見られたものであり、また、次の金環日食は2013年5月10日(金)にオーストラリア大陸、キリバス共和国のギルバート諸島などで見られるものです。

 日本で金環日食が見られるのは、1987年9月23日に沖縄や中国などで見られた金環日食以来約25年ぶりです。また、今回の金環日食の次に日本で金環日食が見られるのは、18年後の2030年6月1日に北海道で見られるものとなります。
 なお、東京都市圏で金環日食が見られるのは、1839年9月7日(この日食は世界時の9月7日の日食ですが、
日本では日本標準時の9月8日となります)で、日の出直後に見られた金環日食以来、実に173年ぶりです。

(1839年9月7日の金環日食について)
 日本では、1839年9月8日(現在使用している暦と時刻で表記した場合です)の早朝にみられた日食です。金環日食の見られた地域は、(現在の地域で表現すると)東京都、千葉県北部、茨城県、神奈川県(南部の一部を除く)、静岡県北部、山梨県、埼玉県、栃木県、群馬県などです。中心線は、長野、群馬、埼玉、茨城県を通過しています。
 東京都中央区では5時30分頃、東の空に太陽高度約2度の高さで、2分27秒の金環日食が見られました。金環日食としては、2012年のほうが条件が良いようです。
 金環日食帯は、日の出とともに日本で始まり、太平洋上を進み、ハワイ諸島の南の海上を抜けて、南半球の南太平洋上で終わっています。
 上記は、NASAのベッセル要素を用いて、エクリプスナビゲーターVer.2でシミュレーションを行った結果をもとにしています。
※1883年10月30日(世界時)の金環日食は、その金環日食帯の北限界線が、盛岡付近、南限界線が水戸付近、中心線が山形の南を
  通過しています。
※1958年4月19日(世界時)の金環日食は、その金環日食帯の中に、東京都の八丈島が、また中心線近くに青ヶ島が含まれています。
※したがって、上記の1839年の金環日食から2012年5月21日までの日食の、173年ぶりという表現は、「首都圏では」、あるいは
 「東京では」ではなく、「東京都市圏では」という表現が正しいものになるかと考えます。
 
  ※日本付近では5月21日(月)に金環日食となります。
  ※現時点での計算データに基づいて説明しています。金環日食が近づいた時点で厳密な計算結果による表現に変更する場合があります。
  
 (計算結果を厳密なものに変更しました。金環日食に関連するページにあるデーターは全て最新のものです。今後の変更はありません。2012年1月27日)
  ※ここに記述する内容は、日食を高精度に計算するソフトウエアである「エクリプスナビゲーターVer.2」の計算結果に基づいています。
  ※私共は「エクリプスナビゲーターVer.2」の心臓部である日食を高精度で計算する演算ルーチンの、計算方法、アルゴリズムなどのノウハウを提供しています。
  ※計算のベースになる「ベッセルの日食要素」はNASAのデータ−に基づいています。
  ※力学時と世界時の差(デルタT)の値が暫定であるため、以下に示すデータは暫定です。特に限界線近くや金環日食帯の端点近くで誤差が大きくなります。
   
(デルタTの値を最新のものとして、計算しなおしました。デルタTの値を67.0秒として、全てを計算しなおしています。この値はアメリカ海軍天文台の最新の
    観測結果より2012年5月の値を推測したものです。今後の変更はありません。2012年1月27日)

  ※この情報を利用することによって発生した損害等に関して、私共は一切責任を負いませんのでご了承ください。


 世界時の5月20日の22時09分頃、月の本影(金環日食であるため、擬本影と表現した方がよいかも知れません)の中心が地球に接します。中国とベトナムの国境付近で、海南島の少し北のトンキン湾で日の出とともに金環日食となります。金環日食帯の中心線(以下中心線と記述します)の南に位置する香港では22時09分前に、太陽高度5度で食分0.948、金環の継続時間が3分46秒の金環日食を見ることができます。台湾の台北も金環日食帯の中にあり、22時11分頃に食が最大となり、食分0.938、太陽高度13度で継続時間2分9秒の金環日食となります。
 中国の福州市は中心線のやや北にあり、22時12分過ぎに太陽高度12度で食分0.959の金環日食を見ることができます。



 金環日食帯はここで一度陸地を離れ、東シナ海をやや北東の方向に向きを変えて日本の方向に進みます。運の良いことに、トカラ列島の島々は2009年7月22日の皆既日食に引き続き、再び金環日食を目撃することになるでしょう。種子島、屋久島も金環日食帯に含まれています。ただし残念なことに、奄美大島、喜界島などは金環日食帯の南に位置し、部分日食となります。

 22時21分(日本時間7時21分)頃、中心線は大隈半島のすぐ南の海上に達します。佐多岬ではこのとき、太陽は東からやや北よりの空に高度24度で、食分0.967、継続時間4分49秒の金環日食を見ることができます。この頃、金環日食帯の北限界線が、熊本県と宮崎県の県境を通過します。
 中心線は、その後も海上を進みますが、北限界線は四国の愛媛県から香川県を通過します。高松市は北限界線の北にあり、22時28分(日本時間7時28分)過ぎに太陽は東からやや北よりの空29度で食分0.935の部分日食となります。

 室戸岬では、22時26分(日本時間7時26分)過ぎに金環食の最大となり、継続時間4分38秒、食分0.958のリング状の太陽が東からやや北よりの空29度の高さに輝きます。

 その後、中心線は紀伊半島に上陸し潮岬のすぐ北を通過します。中心線は再び海に出て天竜川の河口のすぐ北を通過します。また北限界線は琵琶湖を横断し岐阜県の中央部を横切ります。

 その後、中心線は駿河湾を進み沼津のすぐ西に上陸し、神奈川県を横断します。横浜では22時34分(日本時間7時34分)頃に、ほぼ真東の空で太陽高度35度、食分0.966で食が最大となり、5分を超える金環日食を見ることができます。
2012年5月20日(世界時)の金環日食帯(オレンジ色の帯の中に含まれる地域で金環日食を見ることができます。
上の日本付近の金環日食帯の図では5月21日と表現しています。


 一方、北限界線は長野県を横断します。、北限界線はその後群馬県から福島県へと抜けていき、相馬付近から海上へ出ます。東京は中心線のやや南に位置しており、その後、中心線は千葉県から茨城県の北浦付近を経て本影の中心が22時40分(7時40分)前には海上へ抜けていきます。

 海上へ出た金環日食帯はアリューシャン列島の方向をめざして進みます。金環の継続時間が最大となるのは、北緯49度05分、東経176度17分のアリューシャン列島の手前の海上で、ここでは、太陽は南東の空61度の高さ。継続時間は5分46秒です。金環日食帯の幅は237キロメートルです。
 金環日食帯はその後、アメリカ合衆国のカリフォルニア州とオレゴン州の州境付近に上陸します。サンフランシスコから北の方に位置するクレセント・シティー付近に1時26分過ぎに本影の中心が上陸します。ここでの太陽は、西からやや北の空22度の高さで金環日食となります。食分は0.968、金環の継続時間は4分48秒ほどです。その後金環日食帯はネバダ州、ユタ州、アリゾナ州、コロラド州の一部、ニューメキシコ州などを通り、テキサス州付近で1時36分過ぎに日没とともに終了します。
東京での金環日食の様子(時刻は日本標準時)
金環食の時の太陽高度は東の空で約35度、金環の継続時間は5分4秒程度です。

各地の日食の状況

  上の図は、全国各地の日食の状況を示しています。図において、太陽の欠け具合は、各地の食の最大の時の状況を示しています。天頂(観測する場所の頭の真上)を上にして描いています。欠け具合の下の数字は、食の最大の時刻(日本標準時)と、その時の欠け具合を示しています。金環日食の場合、食分は1.0を超えることはありません。なお、北京、上海、香港、台北、ソウルは、世界時で示していますので、ご注意ください。金環日食帯から北西及び南東に離れるに従って、食分が小さくなります。