投影中にリスが!!!


 私が勤務していた宮崎市のプラネタリウムは、ショッピングセンターの中にある施設でした。50以上のテナントの入った3階立ての大きなビルで、それは途中で別の大きなショッピングセンターとつながっていました。500台以上の車を駐車できるスペースを持っていましたから、当時の地方のショッピングセンターとしては規模の大きなほうだったと思います。

 当時、私は上司であるKさんと一緒に仕事をしていました。あるとき、プラネタリウムの投影中にスライドが消えて星空だけになった瞬間に、ドームの中をすばやく動くものの気配を感じたのです。その日は特に気にもしませんでしたが、次の日、再び投影の間、暗くなるたびに、今度は、プラネタリウムの前のほうを、動物が動いていく様子を私が見逃す逃すはずがなかった(この文学的表現を良く味わってください)。

 「Kさん、プラネタリウムの中に、何かネズミでもいるみたいですよ」「そいつはマズイ。何とかしなくては・・・」。 さっそくショッピングセンターから虫かごと網を買ってきて、ネズミ?を追いかけました。大騒ぎの末捕まえたのは、ネズミではなく、なんとリスだったのです。

 はて、何でこんなところにリスが??? 二人は顔を見合わせました。しばらくの間は、その答えがわかりませんでしたが、その日の夕方近くにショッピングセンターに買い物に行って、ハタッと思い当たることがありました。その答えはペットショップにあったのです。そこには犬や猫とともに、リスが売られており、どうも、夜の間にカゴを逃げ出して、空調のダクトなどを通って、距離としてははかなり離れたところにあるプラネタリウムのドーム内に紛れ込んだらしいのです。結局そのリスは女子社員の一人が持ち返って育てることになりました。

 この事件は、これで終わるかのように思いましたが、まだ先がありました。次の日、また投影中に動くものがありました。投影をしながら頭の中は混乱していました。昨日のリスは彼女が持って帰ったはずだし、なのに、何でまたリスが・・・???結局そのリスも大騒ぎの末に、捕まえました。やれやれと一息ついたときに、一人の人物が訪ねてきました。それは、科学館の設立準備のために、北海道からはるばるプラネタリウムの視察に来られた方でした。「こんにちはー」 挨拶をする私の顔をけげんそうに見る、その方の目が点になっていました。

 そのときの私といえば、体には某国営テレビ局の「今日の料理」のエプロンを身につけ(ポスターを描くときに、Yシャツが汚れるので必ずこのエプロンをしていました。)、右手には虫かご、左手には網と、おおよそプラネタリウム解説者とは縁のない格好をしていたからです。結局最後まで、そのときの私の姿の理由をその方に話す機会はありませんでした。

 二匹目のリスは、一匹目のあとを追って、同じ経路をたどったものと思われます。こうして、ペットショップから逃げ出した二匹のリスは、二人の女子社員の間で、あたたかく育てられることになったのです。


(プラネタリウム会報1991年Vol.20 No.2に記載したものを修正、加筆)